力新堂法律事務所 Webサイト制作・運営のサポート
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企業の公式サイトや通販サイト、各種ネットサービスサイト、ECサイトなどのWebサイトにはさまざまな法律規制が及びます。知らず知らずの間に法律に違反すると、行政勧告を受けたり罰則が適用されたり損害賠償請求されたりする可能性もあり、軽く考えてはなりません。
自社サイトを作る場合だけではなく、他社からWebサイトの構築や管理運営を任される際にも法的知識が必須です。
今回はWebサイト構築の際に知っておくべき法律の知識について、弁護士が解説していきます。
企業が構築するウェブサイトや掲載内容にはさまざまな種類があります。
上記のようなウェブサイトには広告規制を始めとした法律上の規制が及びます。広告を規制する法律としては「特定商取引法」や「景品表示法」などが有名で、聞いたことがある方もおられるでしょう。
企業サイトには、どのような内容も自由に掲載して良いわけではありません。サイトを公開する前に「すべてのページが法律に適合しているか」確認する必要があります。
自社で作成したウェブサイトが法律違反となった場合、どういったリスクが発生するのかみてみましょう。
違法な広告表現をすると、担当省庁から行政勧告を受ける可能性があります。指導を受けても改善がみられない場合、全国に違反事例として公開されてしまうリスクが発生します。そうなれば社会における信用が大きく低下してしまうでしょう。
広告表現で法律違反をすると「課徴金」を課されるケースがあります。課徴金とは「ルール違反をしたことによってペナルティとして支払わねばならないお金」です。刑事罰ではないので前科にはなりませんが金額が1億円などかなり大きくなるケースもあり、手痛い経済的損失となるでしょう。
違反内容によっては刑事罰が適用されるケースもあります。企業に高額な罰金が科されたり経営者個人に懲役・罰金などの刑罰が科されたりして大きな不利益となります。
違法な表現によって他社、他人の権利を侵害してしまったら、相手から損害賠償請求を受ける可能性があります。経済的な損失も発生しますし対応の手間や時間などのコストがかかります。
ウェブサイトで違法な内容を掲載している事実が世間に知れると、評判が低下して風評被害が発生します。商品やサービスのイメージが悪くなり、売上げが低下して収益を圧迫してしまうおそれも高まります。
他社のウェブサイトを構築、運営する広告会社などが違法な表現をすると、取引先である広告主に迷惑をかけます。損害賠償請求をされるおそれがありますし、取引先の喪失にもつながります。信用がなくなり、新規顧客獲得も困難となるでしょう。
違法な広告表現をしている事実を世間に知られると、入社を希望する人も減り既存の従業員が見切りをつけて退職してしまう可能性も高くなります。
ウェブ業界ではただでさえ優秀な人材確保が喫緊の課題となっているところ、評判を落として機会を逸してしまうと大きなリスクとなります。
以上のように、企業がウェブサイトで違法な表現をするとさまざまなリスクが発生します。正しい法律知識を持ち、リーガルチェックを受けて適切に対応しましょう。
以下で企業のウェブサイト構築で注意すべき法律上のポイントについて、個別に解説していきます。
ウェブ上でサービスを提供する場合、サイトの「利用規約」が必要になるケースがあります。
利用規約は、そのサービスを利用する顧客に適用されるルールを示すものです。
一般に事業者が消費者へサービスを提供するときには「契約」を締結しますが、大量の顧客が利用するウェブサイトではいちいち個別契約を締結するのが困難です。そこで従来からサイト側が「利用規約」を提示し、それに同意した顧客には当然に利用規約が全部適用され扱いとされてきました。
ただサイト上に「利用規約」を提示しただけで当然に顧客に利用規約が適用されるわけではありません。必ず顧客による「同意」が必要です。利用規約を適用してウェブサイトを運営するには顧客から明示的に同意を取り付け、その記録を残す方法を用意しておく必要があります。
また利用規約の内容も重要です。「サービス内容」「サービスを変更するときのルール」「顧客側の禁止事項」「違反した場合のペナルティの内容」など、わかりやすく定めましょう。事業者側が過大な損害賠償請求を受けないように「責任の上限」なども定めておくべきです。
さらに「顧客に一方的に不利益となる条項」は無効となる可能性もあるので注意が必要です。
定型約款が認められるにはいくつか条件がありますが、通販サイト、ECサイト、ネットアプリやSNSなどのサイトについては適用されるケースが多数です。
定型約款が適用されると、個別の条項についてのユーザーの同意が不要となり規約内容の変更も柔軟に行えるなどのメリットがあります。ただしユーザーに不利益となる条項は効果が認められないなどの規制も及びます。
サイト利用規約を策定するときには「定型約款」に該当するかどうかも確認した上で、リスクやトラブルが起こらないよう適切な内容とする必要があります。
ウェブサイトを運営するときには顧客情報を取得する機会が多数あります。個人情報を取り扱う企業は「個人情報保護」を意識しなければなりません。
顧客の氏名や住所、メールアドレスや電話番号、マイナンバー、免許証番号などの個人情報を取り扱う事業者は、基本的にすべて「個人情報取扱事業者」として「個人情報保護法」が適用されます。
個人情報保護法は、個人情報の収集方法や管理方法などについて詳しく定めており、本人からの削除請求や修正請求なども認めています。
個人情報取扱事業者が個人情報を適切な方法で管理しないと、罰則が適用される可能性があります。個人情報を漏えいさせると、顧客への損害賠償金が必要となり多額の損失が発生する危険もあります。
ウェブサイトを構築するときには「プライバシーポリシー」が必要となるケースが多々あります。
プライバシーポリシーとは「個人情報取扱いに関する指針」です。自社がどのように顧客の個人情報を取り扱うのか、収集目的や管理方法等を明らかにして顧客に安心感を与えます。
個個人情報保護法により、個人情報取扱事業者には「個人情報の利用目的の公表」が求められるので、個人情報を取り扱うならサイト上にプライバシーポリシーを明記しておくべきです。またプライバシーポリシーの内容が適切であればサイトや運営企業に対する信用が高まり、顧客は安心してサイトを利用できます。
プライバシーポリシーには、以下のような内容を記載しましょう。
具体的な内容については企業の状況やサービスの性質等により、個別の検討が必要です。安易に「ひな形」を利用すると、プライバシーポリシーによって定められていない「目的外利用」が問題になるなどトラブルにつながるおそれもあります。
ECサイトや商品、サービスを提供するサイトなどでは「特定商取引法」にも注意が必要です。特定商取引法は、消費者が特に被害を受けやすい特定の契約に対する規制を行う法律です。対象となるのは訪問販売、訪問買取、通信販売、マルチ商法、継続的役務提供契約(エステや英会話など)、電話勧誘販売などです。
特定商取引法が適用される場合、「必ず表記しなければならない事項」があります。
もっとも問題になりやすいのは通信販売サイトで、具体的には以下の表示が必要です。
返品条件の記載がない場合、商品受取後8日以内であれば購入者が送料を負担して返品できます。
ネット通販業を行うときには「返品特約」の表記を意識しましょう。返品特約とは「返品を認めるかどうか」や「返品の条件、方法」を定める特約です。
通信販売にはクーリングオフが適用されませんが、返品特約の表記がない場合には購入者は「商品受け取り後8日間、送料を自己負担して返品可能」となります。
返品を不可としたい場合や、返品に関して日数制限やその他のルールを適用したい場合には、必ずサイト上に返品特約を明示しなければなりません。
ネットサイトを構築するときには、他人の「著作権」にも注意が必要です。
著作権とは、文章や写真、イラストなどの「著作物」の作者に認められる権利です。
他人の著作権を侵害すると、差し止めや損害賠償請求をされる可能性がありますし、罰則が適用されるおそれも発生します。
企業サイトに文章や写真、イラスト、動画などを載せる場合には、必ずそれぞれの著作者から権利を譲り受けるか掲載の承諾をとりましょう。たとえば外注のライターやイラストレーターなどに文章やイラストを依頼したら、「著作権の譲渡」を受ける必要があります。無断で他人の著作物を掲載すると信用も失うので、決してやってはいけません。
企業が広告を出すときには「景品表示法」が非常に重要です。
景品表示法は「広告内容を規制する法律」です。広告を見た消費者が勘違いをして不利益な契約を締結してしまわないよう、さまざまな規制を設けています。
重要なのは以下の2つの規制です。
実際よりも著しく質が優良であるとの広告表現が禁止されます。たとえば産地を偽装したり実際には含まれていない有効成分が含まれていると表現したりするケースです。
実際には規格に適合しないのに「〇〇規格に適合している」と表現した場合や「日本初の機能」と表示しているけれど実際には他社製品にもその機能がある場合なども優良誤認表示として禁止されます。
実際よりも消費者にとって有利になるように見せかける表現です。たとえば「期間限定で〇〇%引き」などと表示しながら実際には期間を限定せずに値引き価格を適用し続けているケースが該当します。
景品表示法に違反すると「課徴金」というペナルティの金銭を徴収されたり、違反事例として公表されたりするリスクがあります。罰則が適用される可能性もあるので、くれぐれも「大げさすぎる広告」をしないように注意しましょう。
化粧品や医薬品を扱う事業者には「薬機法」の知識が必須です。薬機法とは、医薬品や医療機器の取扱いや広告表現について定める法律です。かつての「薬事法」が改正されて「医薬品医療機器等法(薬機法)」となりました。
医薬品には副作用のあるものなども多く、人間の身体に重大な影響を及ぼします。勘違いした消費者が間違った使い方をしては大変なので、薬機法は広告表現方法を厳しく制限しています。具体的には医薬品を「効能の強度」に応じて3種に分類し、それぞれ認定された効果しか標榜してはならないことになっています。また医薬品として認められなくても一部の効能が認められるものは「医薬部外品」として一定の広告が認められます。
医薬品でも医薬部外品でもないものは、一切の「治療効果」を表現することが認められません。たとえば医薬部外品にならない化粧品や単なる健康食品は「身体の機能を回復させる」といった表現ができません。
健康食品をはじめとする食品を販売するときには「健康増進法」や「食品表示法」の規制を受けます。
健康増進法は、健康食品に適用される法律です。景品表示法と同様に「優良誤認表示」や「有利誤認表示」を禁止しています。
食品表示法は、食品の栄養成分や賞味期限、保存方法、製造業者、アレルギー表示、原料や原産地などの一定事項について表示を求める法律です。食品を販売する際には、必ず食品表示法上要求される記載事項を明示しなければなりません。最近法改正が行われて2020年4月から施行されているので、改正法に対応できていない企業は早急な対策が必要です。
企業がサイトを構築するとき「商標権侵害」にも注意が必要です。
商標権とは、ロゴや社名、商品名などの「マーク」に認められる独占的な権利です。自社でロゴなどを作り「商標登録」すれば、その商標には登録した会社に独占的な利用権が認められ、他社は同じものや類似したマークの利用ができなくなります。
知らない間に他社の商標を利用してしまったら、権利者から損害賠償請求や差し止め請求を受ける可能性があります。
また商標法には罰則も用意されているので、悪質な場合には処罰を受けるリスクも発生します。
自社サイトにロゴや商品名などを掲載する前に「他社によって商標登録されていないか」確認する必要があるといえるでしょう。
他社の商法権を侵害しなくても「不正競争防止法」によって規制されるケースがあります。不正競争防止法は、企業間の不公正な競争を禁止して市場を公正に動かしていくための法律です。
不正競争防止法は、以下のような行為を禁止しています。
不正競争防止法違反には罰則もあるのでくれぐれも違反しないよう注意しましょう。
人には「自分の姿をむやみに撮影・公表されない権利」として「肖像権」が認められます。他人が写り込んだ写真をモデルに無断で掲載すると、肖像権侵害となってしまう可能性があります。
人物の顔が写っている写真を利用したい場合、ぼかしを入れるか「モデルリリース(肖像権の利用許諾)」がついているものを選んで利用しましょう。
サイト運営時にはプライバシー権にも注意が必要です。個人情報の漏えいだけではなく、写真に写り込んだ「個人宅の表札」などがプライバシー権侵害となってしまう可能性もあります。サイトに利用する写真や文章によって他人のプライバシー権を侵害しないよう注意しましょう。
有名人の写真などを利用すると「パブリシティ権」侵害となってしまう可能性があります。パブリシティ権とは財産的価値のある肖像に対する権利です。アイドルなどの有名人の写真はそれだけで商品価値があるので、他人が勝手に利用すると単なる肖像権侵害だけではなくパブリシティ権の侵害となり、莫大な損害賠償が発生する可能性があるのです。
集客のためとはいえ、勝手に有名人の写真や動画を使ってはなりません。
サイトのセキュリティ対策も必須です。脆弱性があり攻撃を受けてダウンしてしまったら顧客の信用を失いますし、情報漏えいの危険も高まります。
運営の際には万全のセキュリティ対策をして臨みましょう。
最近ではネットを使って就職活動をする学生が多いので、自社サイトで従業員を募集する企業が増えています。
ホームページで人材を募集する際には「職業安定法」による規制が及びます。
募集要項には基本的に以下の事項を記載しなければなりません。
虚偽、誇大表現は許されません。
また採用段階になると労働基準法による規制が及び「雇用条件通知書」を交付しなければなりません。最近では法改正が行われ、メールなどによる交付も認められています。
リクルーティングの際にはこうした法律を押さえておきましょう。
クレジットカードを使った決済を認めるECサイトやネットサービスサイトなどは「割賦販売法」にも注意が必要です。割賦販売法は、「分割払い」についてのルールを定める法律です。
たとえばクレジットカードの分割払いを適用した契約で、加盟店と顧客との間でトラブルが起こると、顧客はクレジットカード会社へ「支払いをしない」と主張できます。これを「抗弁権の接続」といいます。加盟店が詐欺を働いたので顧客が契約を取り消すとき、顧客は詐欺をクレジットカード会社に対抗して支払いを拒めるのです。こういったことが度重なると、加盟店は顧客からもクレジットカード会社からも信用されず、営業継続が難しくなる可能性があります。
クレジットカードを利用するときには、顧客やクレジットカード会社への配慮が必須です。
サイトを構築・運営する際にはさまざまな法律が適用され、専門的な法的知識が必要です。
自社のみでは対応が困難な企業も多いでしょう。
当事務所では中小企業やクリニックなどの事業者を中心に、法律的なアドバイスを積極的に行っております。ウェブサイト構築・運用の際に法律面で不安を感じたら、お気軽にご相談下さい。